2008/04/13(日)DAC製作中

PCM2901*1PCM2904/PCM2906の仲間)でDACを作ってます。(DAC完成しました

きっかけは、ONKYO の SE-U55SX を改造していたときで、VLSC回路は複雑すぎてそれにより恩恵よりも、回路が複雑になることによる劣化の方が激しいのではないかと思いまして。思ったら確認するのがエンジニアたるもの。TIのUSB-DACシリーズ(USB-DACチップ)を使ってシンプルな回路を組めばSE-U55SXぐらいの音は出るのではないかと。*2

DC直結DACでバスパワー駆動。コンデンサは奢ってますが、抵抗はいわゆる1円抵抗です。あとフィルムコンデンサがちょうど良い容量がなくて、なんだか分からないものつかってます。あとステレオミニに直接ヘッドホンを挿しても使えたりします。*3

一度プリント基板に味をしめると、いちいち汎用基板で作るのは面倒くさいです。でもやっぱプリント基板はまだまだ高い。

*1 : 正確にはPCM2901E

*2 : あと、SE-U55SXは持ち運ぶのに大きくて邪魔だというのがありまして。国際展示場とか国際展示場とかテーブル狭いし(謎)。パスパワー駆動(謎)させるのはいいけど消費電流も大きいし。

*3 : SNはよくないですけど

オーバーサンプリング

オーバーサンプリング(デルタシグマ)DACの扱いにくさを身をもって実感。このチップはおそらく8倍のオーバーサンプリングだと思うのですが、44kHz*16=704kHz。20kHzで減衰せずに、1MHz付近(700kHz)にあるノイズを減衰させることがいかに大変かよく分かりました。オシロの波形をみれば分かりますが、オーバーサンプリングノイズの太い筋が出てます。

いわゆるCRフィルタ(1次フィルタ)は-6dB/oct(-20dB/deg)にしかなりません。ですから、1MHzでノイズを-40dB減衰させるためには、10kHzから減衰させなければならない。次数を増やせば減衰曲線を急坂にできますが、今度は位相特性が1kHz付近から狂い波形が歪んでしまう。*4

最初は1次フィルタ1つで済ませていたのですが、音の歪みが酷く*51次フィルタを2つに変更しました。理想的には20kHz以上のどんな信号が入っていようと(再生音には)全く関係はないのですが、現実には高周波ノイズは、オペアンプやRC素子の非線形歪みによって混変調されて音質を(著しく)劣化させます。ですから、可能な限り取り除かねばなりません。

高周波ノイズを完全に除去しようとするとフィルタにより再生音を直接劣化させ、高周波ノイズを除去しないと混変調歪みによって再生音を劣化させる。

ノンオーバーサンプリングDACの方が音が良いという話がありますが、こうやって波形をみていると「あり得る話だな」と実感できます。高域ノイズはオーバーサンプリングの宿命のようなものです。

フィルタ処理の結果、オシロで明らかに混変調された信号を見ると気分よくないですよ。この辺、同じ8倍オーバーサンプリングでも、違うDACだともう少し綺麗に(ホワイトに)出るのかもしれませんね。

*4 : 2次以上では位相特性を線形に(群遅延特性を一定に)するのが難しい。ちなみに、-3dB落ちるいわゆるカットオフのポイントでは、位相は既に35度遅れています。

*5 : なぜか聞いていて頭痛がした

音質

まだ回路調整中ですが、現在のところの音質。

SE-U55SX(ノーマル) < 製作中USB-DAC < Prodigy 192VE改 < SE-U55SX改

もっともノーマル状態の SE-U55SX の音なんてろくに覚えてないので*6、その辺は曖昧ですけど。

製作中DACに比べ、192VE、SE-U55SXがあっさりした音なので、その分クリアにきこえますから、順位付けは難しいところです。SE-U55SX改よりは下ですけど。

USB-DACは出力レベルが低いのと抵抗に起因する歪み感がやや辛いところですが、SE-U55SXもそんなに良い抵抗使っているようでもないですし、192VEに至ってはおそらく普通のチップ抵抗ですから

PCM2901 < PCM1796

なんじゃないかと思います。素材(DAC)の差はやはり越えられないのか。もう少し回路を詰めてから、抵抗を取り替えてみる予定。PCM2702も購入済なので、こちらが本命になるのかな*7。同じ回路で比べてみたいところです。

その後

100時間以上通電させコンデンサを回復させて、回路を手直しして電源ノイズを軽減したところ

SE-U55SX(ノーマル) < Prodigy 192VE改 < 製作中USB-DAC < SE-U55SX(改)

になりました。聞き比べると、192VEの抵抗か電源ノイズによる音質劣化(歪み感)が気になります(何度も言いますが、LPFは1円抵抗です)。

さらにノイズ対策をした上でSE-U55SX(改)と比べてみましたが、SE-U55SX(改)の方が音の広がりやクリアさで1枚上手。USB-DACはLPFの抵抗による歪み感が気になります。抵抗を交換したら同等か越えるぐらいになるでしょうか。素性(DAC)の差が大きい模様。

SE-U55SX(改)と比べなければかなり良い音なのに。SE-U55SX(改)はコンデンサ載せ替えただけでDAC回路はほぼいじってないので*8、設計者の思想通りに作るとかなり良いのですね(笑)。ただし、ノーマル状態(改造前)はお話になりませんが(汗)

PCM1704のUSB-DACを作りたくなった。

*6 : エージング除くと、実質1~2日しかノーマル状態で聞いてないし

*7 : こっちの方が話題にはなってますが、実際のところどうなのでしょうか。とても興味があります。なお値段は PCM2702 の方が高めです。

*8 : 出力抵抗と出力カップリングコンの削除のみ

関係ないけど

その筋では有名なDenDAC。PCM2705直結で1万2000円も取るのなよ…。*9

*9 : でも手間賃を考えると分からないでもない。何かのキットで実感なり。

メモ

Prodigy 192VEのオペアンプを交換

はてブ数 2007/07/17電子::オーディオ

Prodigy 192の廉価版として、デジタル入出力などを省略したサウンドカードProdigy 192VE。実売8千円前後ながらなかなかの高音質であり、気に入って使っていましたが、ヘッドホンアンプ作成後「どうも音が歪む」感じがしてオペアンプの載せ替えに挑戦してみました。

Prodigy 192VEの高音質化

192VEにはオペアンプとしてNJM4580が使われています。

NJM4580*1は決して悪いオペアンプではないのですが、自作ヘッドホンアンプで聞いていると、どうにもオペアンプに起因すると思われるうるささがあります。複数の音が混ざって聞こえてしまいガヤガヤしてしまいます。

オペアンプと言えばバーブラウンの OPA2604(約550円)や OPA2134(約300円)が有名ですが、最近登場でそこそこ評判のいいアナログ・デバイセズの高スルーレートオペアンプAD8066ARZ(約600円)*1に載せ替えてみました。(秋葉原だとサンエレクトロで売ってます。)

改造のポイント

Prodigy 192VEの出力部の回路図は次のようになっています。

Prodigy 192VE.gif

  • この回路図は出力チャンネル用です。
  • 部品番号は、Out1のものを記載しています。
  • Out1-2, Out5-6はヘッドホン出力との切り替えリレーを含みますが、回路図上では省略しています。
Prodigy 192VE各チャンネルと部品対応
チャンネルL-chR-chオペアンプ
Out1-2C42,C48,C54,Q5C43,C49,C55,Q6U9
Out3-4C44,C50,C56,Q7C45,C51,C57,Q8U10
Out5-6C46,C52,C58,Q9C47,C53,C59,Q10U11
Line INC41,R52,R53C39,R46,R47U7→U8
MIC INC36,R37-none-U6

ロットにより回路図や部品番号が違うことがありますので、改造時は必ず自らご確認ください。また改造は各自の責任で行ってください。著者は一切の責任を負いかねます。

出力チャンネルであるU9, U10, U11をそれぞれAD8066に載せ替えてみました。また、出力用カップリングコンデンサC48,C49(他チャンネルでは相当品)をジャンパーしてみました。この改造により最大1.5mV程度のオフセットが出力される可能性があります。高出力アンプなどに接続する場合は十分にご注意ください。またC42等はスルー(削除)できません。*2

192VE.jpg
192VE_4580.jpg
192VE_AD8066.jpg

オペアンプの外し方

無理矢理外してパターンを切り取ってしまわないように十分注意してください。サンハヤトの表面実装取り外しキット*3があれは完璧ですが、40W以上のはんだごてを使って、ハンダを上側下側ともにたっぷりたらして4ピンともブリッジした状態で交互に十分に熱すれば外すことができます。

よく熱した状態で、小さいマイナスドライバーなどを用いて少し力を加えます。このとき無理な力を加えないようにくれぐれも注意してください。

*1 : SOP, SOLパッケージ。1.27ピッチ8ピン2回路

*2 : これをジャンパすると大きなDCオフセットが出てアンプを損傷する恐れがあります。

*3 : 千石電商等で売ってます

音質評価

一度にかつ正確に評価するために、Out1-2をNJM4580のまま、Out3-4をAD8066に載せ替え、Out5-6をAD8066に載せ替えてかつカップリングコンデンサをバイパス(ジャンパー)した状態で、ドライバのオーディオ出力をクローン設定にして、Out1-2, Out3-4, Out5-6 で全く同じデータを再生。音量もすべてMaxの状態で評価しました。

なお再生ソフトからの出力にはASIOを用いました。

NJM4580

  • 決して悪い音ではない。
  • AD8066に比べるとガヤガヤとした音。
  • J-POPやオーケストラなど多くの楽器が一度に鳴ったときに、複数の楽器の音がまざりうるさく聞こえる。
  • 中域の音が若干細く(力感なく)感じられる。

AD8066(カップリングコンあり)

  • NJM4580とは違い、ガヤガヤとしない。
  • 複数の音が一度に鳴ったとき、それぞれの音をきちんと区別して聞き分けることができる。いわゆる音の解像度が高い。

AD8066+カップリングコンのバイパス

「AD8066+カップリングコンあり」と比較。

  • 低域が1段下に伸びている。低音がはっきりと再生される。
  • 音の明瞭さ、クリアさが増している。高域の音の歪み感が全くなく超高域までストレートに伸びきっている。高域のかすれ感が全くない。
  • 音が広がりが増している。左右だけでなく、前後の定位感がある。

逆に言えば、カップリングコンがあると次のような感じです。

  • 若干ながら高域に歪み感を感じ、高域がやや削れている(丸くなっていると言うよりはガリガリっと削れている印象)。高域のかすれ感がある。
  • 音の明瞭さがやや悪く、音の広がりが小さい(狭い)。

結果

大満足という結果になりました。特にAD8066+カップリングコン削除で別世界の音という感じです。高域の綺麗な伸び具合や低音の素直さは格別です。自作ヘッドホンアンプ(カップリングコンなしDCアンプ)と組み合わせるとピアノやストリングのリアルさが身震いするほどです。

二~三世代前のプロ用オーディオカードよりいい音してます。

追記 2007/12/07

onkyoのSE-U55SXを入手したので聞き比べたところ(SE-U55SX無改造状態)、192VEの歪み感が気になってしまいました。この「歪み」はDAC直後のカップリングコンデンサC42~C47(おそらく音響用ではない)によるもので、これを載せ替えたところ解消しました。

192ve_oscon.jpg

写真のとおりOS-CON(10v47uF)を突っ込みましたが*4、オーディオ用電解コンデンサとかなら何でも構いません。使用可能なのは6.3V/10uF以上のものです。物理的に小さいコンデンサを選んでください。

*4 : OUT 1-2はPCスピーカー用なので出力カップリングコン含めオリジナルのままです。

さらに改造(v2) 2008/04/22

ADC/DACチップのアナログ電源まわりのコンデンサを載せ替えて、同時にノイズ対策をしました。出力抵抗の100Ωをニッコームのプレート抵抗に置き換えました。SE-U55SX(改)と同等以上の音質になりました。

※他の記事では、この状態を192VE(改v2)と書きます。

最終改造(v3) 2008/06/18

オペアンプ電源のコンデンサをうち1組をUTSJ 16v470uFに交換しました。ほとんど変化ないかと思ったのですが、かなり効果的で音の透明度が増しました。

R56, R62, R68をそれぞれニッコームの抵抗RP-44C、10kΩがなかったのでR62/R68については多摩電気工業のLFに置き換えましまた*5。がやがやとした曇りが非常に透明度の高い音質になっています。

DAC音質比較も参照してください。

*5 : RP-24Cは大きさからして入らないので、RP-44かRP-88しかない。

2007/03/17(土)YST-M40の感想

使用感と感想

YST-M40を700円で入手して、早速改造F通スピーカーと置換してみました。

  • 低音はサイズから考えられないほど非常によく出るようになった
  • 高音は若干落ち、中高域の明瞭さが減った。電流出力の高音再生能力は驚異的なので比べること自体ナンセンス。通常レベルで考えればよくでている。
  • 2wayスピーカーなので定位は悪くなった(音の存在する位置がはっきりしなくなった)。

という感じです。このYAMAHAのYST-M40はサイズからすればよく出来たスピーカーであると思います。思うのですが……あぁーなんというか2wayの谷が……。低音も中高音も遜色なく出てるのですが、そのウーハーとスコーカーの間に谷がある。

F特的に凹んでいるのかどうかまでは測定してみないとわかりませんが*1、低音部と中高音で別種の音がしてるのが気になって仕方ない。たしかに低音がでているのですが、それが中高音からシームレスに出てるというよりは、中高音とは別の音として低音が出ているという感じで、2つに音成分に分離して聞こえてしまう

2wayの弊害……かと思ってたんですが、YSTはフルレンジでしたので(汗)、ヤマハ独特のアクティブサーボの弊害なんじゃないかと思います。

*1 : F特的にもへこんでるような気がする

結論としては

F通に戻そうかなぁ……。たしかに200Hz以下はスパっと切れるような(低音が出ない)ひどい特性ですが、中高域の音の明瞭さとは捨てがたい。あとYST-M40の1つの音が2つに聞こえるのは違和感がどうしても。

2006/10/09(月)いい音って??

音の要素

例えばそこにスピーカーとアンプがあったとして。なにが一番重要なんだろう。

よくスピーカーやアンプの性能で出てくるF特(周波数特性)というのは周波数ごとの音の強さ(音量)を表したもので、たしかにフラットであるに越したことはないんだけど、それだけに捕らわれると音の本質を見失ってしまいます。F特というのは(回路系でいうところの)定常状態の特性しか表していません。

まず重要なものとして位相というものがあります。簡単に言えば音がなってから左右の耳に到達するまでの時間差のことです。これについては周波数特性表で表せます。これがずれていると、音の定位というものが定まらなくなります。生録が一番分かりやすいのですが、ボーカルがぴったり中央にこなければ狂っています。2way、3wayではクロスオーバー付近で大幅に位相が狂うので、どうしても不利になります*1

そして大切なのが、音の立ち上がりと立ち下がりのようです。これは回路系でいうところの過渡応答に相当するのですが、この辺の鈍さは音の臨場感(生っぽさ)に関係あるような気がします。電流出力方式が絶対的に有利なところですね。*2

例えば、録音したヴォーカルやピアノ、オーケストラが、あたかもそこで鳴っているように聞こえたら、多少F特なりが悪かろうとそれがいいように思うんですよね。しかし、最近よく思うのですがピアノの音をリアルにならすのって並大抵のことではないようです。

仮説

スピーカーって楽器だよなぁーと思うんですよね。だから押さえつけて演奏させるよりは、箱をまるでノドのように鳴らしてあげる方がいいんじゃないかと。

*1 : バスレフ等は低音しか出さないので(低音しかださなければ)、多少遅れますが中域ほど位相は関係なくなります。例えば300Hzならば、1波形が1m以上あるわけで相対的に位相の影響をうけにくい。

*2 : あとはよく言われるトランジスタ(アンプ)の歪み。これは鬼門です。負帰還(NFB)をかければみかけの歪み特性はいくらでも改善するのですが……、どうもそういうものではなように思います。A級アンプとB級アンプの越えられない壁はこの歪みなのかも。