▼ Chu Moyヘッドホンアンプ製作のコツ
■回路図
- DC直結アンプになっています。オペアンプ自体のオフセットが出力側に少し出ますが、多くの場合「数mV程度」なので気にしなくていいと思います。
- 増幅率は「10kΩ/2.2kΩ+1=約5.5倍」です。ヘッドホンアンプは1〜2倍の方が使いやすいのですが、単純に増幅率を下げると発信しやすくなります。
- 帰還抵抗には1〜10kぐらいがよいと思います。ここの抵抗をあまり大きくするとノイズが増えます*1。MΩぐらいまで大きくするとノイズを拾い発振することもあります。
- 電解コンデンサは手元では低ESRコンデンサであるOSコンを使用しました。標準品コンデンサや音響用などを使う場合は、0.1uFフィルムコンデンサをパラレルに付ける方か良いです。これは電源のインピーダンスを下げるためです(インピーダンスが下がると瞬間的な電流供給能力が高まり、また電源ノイズ除去能力も向上します)。
- 電源側のGNDバランスにLEDを付ける作例もありますが、電源のバランスが崩れたときに修復されない問題があるのでLEDは分圧部には付けないようにします。
- 手前にボリュームを付けない場合は、入力端子を10kΩ程度でGNDに落としてください。そうしないと発振することがあります。
- 中点バランス用の抵抗はなるべく小さくしますが、その分電気は無駄に消費されてしまいます。1〜5kΩぐらいを使うのが良いと思います。
*1 : オペアンプの電流ノイズというものです。
■実装上の注意
- コンデンサとオペアンプ電源はなるべく太い線で短く配線します。こうしないと、いくら性能のいいコンデンサを使用しても無意味になります。
- オペアンプ入力端子の抵抗は、なるべくオペアンプ側に近づけて配線します。その方がノイズを拾いにく、発振しにくくなります。
■発振のお話
よく知られているとおり、この回路はヘッドホン接続時に発振することがあります。特に、最近の高速オペアンプ・高性能オペアンプは軒並み発振します。
普通は使いませんが、高速オペアンプであるNJM318DやLM7171で、1kHz矩形波を入れたときの写真が次になります。
| オペアンプ | NJM4580DD | NJM318D | LM7171 |
|---|---|---|---|
| 矩形波応答 | |||
| 帯域幅等 | 15MHz, 5V/us | 15MHz, 70V/us | 200MHz, 4100V/us |
NJM4580DD はよく知られたオーディオ用オペアンプ、非オーディオ用の他2つは高スルーレートオペアンプです。波形が歪んでいることが分かります。実際オーディオを再生させるとトゲトゲして聴けたものではありませんでした。
発振させないために
発振させないためのポイントは次のとおりです。
- 増幅率を5倍以上にする。
- 帰還回路で位相補償を行う。
- 出力抵抗を付ける。
- Zobelフィルタを付ける。
出力抵抗を付けず、増幅率を1倍というのはかなりの冒険になります。後ろ2つについては個別に解説します。
■高性能オペアンプの発振防止と出力抵抗
出力抵抗について、誤解が広がっているようなので注意。
| 発振しにくくする | 発振しやすくする |
|---|---|
どちらもオペアンプの出力電流制限用としては同じ意味がありますが、発振防止用としてはまったく逆の効果があります。
ループ外抵抗
- 発振しにくくなります。安全性では数十Ωが必要ですが、音質への影響を考えると10Ωぐらい、できれば1〜2.2Ωぐらいにしたいところです。しかしながら、1Ωぐらいで発振防止効果のあるオペアンプは限られます。
- この抵抗の音質が、そのまま再生音に直結します。
- 数Ωより大きくすると音質の面からはオススメできません。しかしながら、LM4562やLT1028等の広帯域アンプではこれでも発振することがあり、安定のために50〜100Ω近くの値を直列に入れる必要があります。
- 使用出来るオペアンプは限られますがZobelに逃げる方が得策でしょう。
- 理屈など
- 出力インピーダンスが入れた抵抗値とほぼ等しくなります。
- (理屈)この抵抗を入れることで負荷が純コンデンサ(ケーブル容量など)から、どんどん遠ざかるため位相が遅れにくくなる。
ループ内抵抗
- 発振しやすくする。10Ω程度から効果的に発振能力を高め、よく使われる51Ωでは相当発振しやすくなります。
- 数十Ω入れても出力インピーダンスはほとんど変わらない(0.01Ω以下と思って問題ない)。
- 理屈とか
- (理屈)この抵抗を入れることで、オペアンプの純出力抵抗*2がより高くなるため容量負荷により位相が遅れやすくなる。
- またオペアンプの駆動力が出力抵抗で制約されるために、駆動性能を殺す結果となります。単純にアンプとしていの性能は入れれば入れるほど悪くなります。
- そもそもオペアンプはこの位置に抵抗を入れることを想定していません(例外あり)。
ループ外抵抗はあまり付けたくはないのですが、音響用抵抗などで数Ωぐらい入れるだけでも入れないよりは随分マシになります。回路図に示した+1倍動作では安定しにくいものです。
*2 : 負帰還によるみかけ出力抵抗は無関係。純粋な出力抵抗値。
■Zobelフィルタによる発振防止
使用出来るオペアンプは限られますか、Zobelフィルタと呼ばれる回路を取り付けることで、オペアンプを安定させることもできます。
LT1028やLT1115などの多くの高速オペアンプで効果を発揮しますが、LT1498など容量性負荷に対して特殊な作りをしているオペアンプ(特殊な位相補償により発振しにくくしているオペアンプ)を使用すると、付けることで逆に発振させてしまうことがあります。
使用出来ないオペアンプがあるということだけ注意すれば、音質劣化もほとんどなく、かなり強烈に回路を安定させる効果があり、おすすめです。
理屈など
Zobelフィルタの 10Ω+0.1uF というのは、もともとスピーカー(8Ω)の負荷インピーダンスを平坦化化させるために*3と解説されます。
しかしこのような回路での働きは、それとは違います。駆動力の劣る今回のような回路では、Zobelフィルタは駆動回路側(今回はオペアンプ)の駆動性能の悪さと相まって、高周波での性能を殺すように働きます。つまり、それ自体がLPF(ローパスフィルタ)となり位相補償として働きます。*4
オペアンプの発振は高周波(1MHz〜)で起こるのですが、そもそも高周波でのオペアンプの性能を殺すことで発振を抑止します。オペアンプの発振はケーブル容量などコンデンサ負荷によるものがほとんどですが、Zobelフィルタより高周波域でのインピーダンスを10Ωで頭打ちし、ケーブル容量よる影響を相対的に小さくします。*5
*3 : 8Ωでなく10Ωなのは抵抗値入手の関係もあるのでしょうが、スピーカー8Ω+アイソレーターの抵抗1Ω=9Ωなのでほぼ10Ωに繰り上げたというのがあると思います。
*4 : 今回は省略しますが、オシロスコープで矩形波を入力してZobelフィルタの効果を観察すると、綺麗に角が削れます。
*5 : 余談ですが、本来のZobelはコイル成分による発振を防止するように働き、容量負荷に対してはアイソレーターと呼ばれる1Ωと1uHの並列回路をスピーカーに対して直列に挿入し使用します。つまり元々は誘導性負荷に対する補償回路であるZobelが、駆動回路が非力なばっかりに容量負荷に対して安定性を補償するという面白い現象が起こっています。
- TB-URL http://nabe.blog.abk.nu/0196/tb/
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1: fumfum_nu 2007年11月21日(水) 深夜1時47分
電源その他よりは出力に直列抵抗がないのが問題では?
ヘッドホンのケーブルの容量だけで200pFはあるので容量負荷の対策無しでは普通は不安定になります
あとLM7171クラスになるとパスコンまでの距離が3mm以上あると、まずまともに動かないと思います、グラウンドプレーンまでも同様で。
OSコンをどのように実装されたのか分かりませんが、素直に積セラを使ったほうがよいと思いますが。
2: fumfum_nu 2007年11月21日(水) 深夜2時01分
失礼、3mmでなく3×3mmで
ユニバーサル基板の穴3つ分ということです
3: なべ 2007年11月24日(土) 午後11時57分
出力抵抗を付けたいところですが、出力インピーダンスが上がるとまた再生音に影響がありますからね……。CMoyのいいところ(みなさんがいいと思っている?ところ)はオペアンプによる低歪駆動にもあるように思うので。数Ωでも付けたら収まる気もしますが、一般的なCMoyを作ること(検証すること)にこの記事の意味があって(一般的なCMoyは出力抵抗を付けない)、なるべくなら付けたくないのです。
パスコンはあとでソケット直付けでもして検証してみます。実はもっと詳細な検証記事があるのですが、その部分の検証がまだ不足で公開できずにいます(^^;
4: fumfum_nu 2007年11月25日(日) 午後9時32分
?、原典でも付いてますが
http://www.headwize.com/projects/showfile.php?file=cmoy2_prj.htm
5: なべ 2007年11月25日(日) 午後10時25分
基本図のFigure 1のR5は電流制限用で、容量性負荷による位相回転には逆効果かと。
後の図で発振防止用……じゃないな飛び込みノイズ防止用として出力抵抗が言及されてますけど(Figure A1左)、国内のいわゆるCMoy製作記事では付いてるものは少ないですよ。
6: babypowder 2008年02月09日(土) 深夜3時41分
ヘッドホンアンプを作るために勉強中です・・・質問させてください。
中点バランス用の抵抗値を2.2kにされたのは、
「消費電流を小さくするにはなるべく大きくしたほうがいいが、電源のインピーダンスも高くなってしまうので2.2kくらいがちょうどいい」
という理解でいいのでしょうか?
7: なべ 2008年02月10日(日) 午後10時09分
そこの抵抗をいくつにしても電源のインピーダンスには全く関係ありませんよ。電源のインピーダンスというのは、電源に対して「直列」に入っている抵抗値(等価抵抗)です。記事中に書いてありますが、
>中点バランス用の抵抗はなるべく小さくします。「消費電流のバランス差」より
>「中点バランス用抵抗の消費電流」が十分に小さければ電源のバランス崩れによる
>発振は起きません。
で、消費電流が数m〜10mAぐらいなので(ヘッドホンアンプによる)、だいたいそんなもんかなと。
8: babypowder 2008年02月11日(月) 午後9時15分
お返事、ありがとうございます。
ですがやっぱり理解できません orz
勉強して出直してきます・・
9: なべ 2008年02月11日(月) 午後11時09分
理解出来ない部分を具体的に言ってもらえれば説明もできますが(最近はそういうのできる人が少ないんですよね。何が分からないか分からないってのが多くて)。回路に慣れないうちは、こういう擬似正負電源(擬似的にあたかも±の電源があるかのようにみせかける回路)ではなく、きちんと電池を2つ使った正負電源の回路を作った方が基礎として勉強になりますよ(性能もそっちの方がいいし)。
10: babypowder 2008年02月12日(火) 深夜1時04分
はぁ・・では簡潔に
>「中点バランス用抵抗の消費電流」が十分に小さければ〜
となっているのに
>中点バランス用の抵抗はなるべく小さくします
となっているのはなぜなのでしょうか?
かなりアホなことを聞いているかもしれませんがよろしくお願いいたします。
11: なべ 2008年02月13日(水) 深夜0時40分
単なる誤植です。すごい、恥ずかしい(汗
(本文の方なおしておきました)