回路図の読み方入門

はてブ数 2010/12/07電子読み物

※本稿はC78でのstrvさんのサークル同人誌への寄稿原稿を元に書き起こしました。アナログ回路とアナログフィルタの超入門も合わせてお読みください。

寄稿原稿のpdf版 : strv-c78-nabe.pdf


回路記号と部品写真

回路記号写真解説
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電池や電源、接頭文字はV。上側がプラス、下側がマイナスです。右の記号はいくつかの電池の直列接続を表していますが、特に区別なく左の記号を使用することもあります。
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抵抗、接頭文字はR。カーボン抵抗、金属皮膜抵抗などの種類があります。抵抗値はカラーコードと呼ばれる帯を読みます。カラーコードの読み方
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可変抵抗、もしくはボリューム。接頭文字はVR。右に回すと大きくなります。VR1のように足番号が対応します(番号の振り方は部品によって違います)。VR2はそれ自体の抵抗値が変わるものですが、通常VR1の1と2を接続して代用します。
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2つのボリュームが1体となったものを2連ボリュームといいます。回路図では同じ部品番号を振りそれぞれ1/2と2/2と書きます。アンプの左右ボリュームのように、2つの音量を連動させたいときに使用します。
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コイル、接頭文字はL。左は防磁型の電流をたくさん流す用のコイルで、右は見た目が抵抗のような小型コイルです。L1とL2はそれぞれコアなしとコアありですが、使い分けないこともあります。
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コンデンサ、接頭文字はC。フィルムコンデンサ又は(積層)セラミックコンデンサを示します。1uF程度までの比較的小容量のコンデンサです。極性はありません。アンプ等には通常フィルムコンを使用します。
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電解コンデンサ、接頭文字はC。電解液等が入ったコンデンサです。1~1000uF程度の比較的大容量のコンデンサです。極性があり、マークのある方、もしくは足が短いほうがマイナスです。
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ダイオード、接頭文字はD。方向(極性)があります。カソード側に帯マークがあります。D1はシリコンダイオード、D2はショットキバリアダイオー(SBD)、D3はツェナーダイオード、D4は定電流ダイオード。部品の見た目では区別できません。
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発光ダイオード、接頭文字はD等。略称LED。方向(極性)があります。ダイオードは上(アノード)から下(カソード)へのみ流れます。部品は足が短い方、もしくは本体に切り込みがある方がカソードです。
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トランジスタ、接頭文字Q。正式にはバイポーラトランジスタ。略称Tr。Q1がnpn型、Q2がpnp型。Q1/Q2とQ3/Q4は特に区別はありません。一般的に文字が読める側から見てECB(エクボ)となっていますが、海外製や一部のTrは違う並びになっています。
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FETもしくはJFET、接頭文字Q。正式には接合型(J-)電界効果トランジスタ(FET)。Q5がNチャネル型、Q6がPチャネル型。最近は余り使われません。足とSGDの対応は物によってマチマチです。
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MOS-FETもしくはMOS、接頭文字MかQ。電界効果トランジスタ(FET)の一種。Q7がNチャネル型、Q8がPチャネル型。足の対応は物によりマチマチです。大電力が出力できるため最近非常によく使われます。電力用途にもっぱらNチャネル型のみ流通しています。
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スイッチ、接頭文字はSW。SW1はon/off式スイッチ、SW2はon/on式スイッチ(切り替えSW)。SWの状態によりb-aがつながったり、b-cがつながったりします。2つのスイッチが連動する2連SW(2回路入/写真は共に2回路)もあります。
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押しボタンスイッチもしくはタクトスイッチ。スイッチの一種です。ボタンを押している間だけ電気が流れます。ブザーやゲームのボタンはこのタイプです。右の白くて小さいものは基板に取り付ける押しボタンスイッチ(タクトスイッチ)です。
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ステレオジャック、接頭文字はJ。左(L)と右(R)の音声信号とGNDをつなぐためのジャックです。写真は3.5φのミニジャックと呼ばれ、イヤホン等で使われます。ジャックの仕様は様々でデータシートや目視、テスター等で確認します。
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RCAジャック、接頭文字はJ。1つのコネクタで1つの信号(モノラル1ch分)を接続できます。ジャックの仕様はデータシートや目視、テスター等で確認します。
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IC(集積回路)、接頭文字はU。内部に抵抗やトランジスタ等複数の素子を持つものはすべてICとなり接頭文字はUに統一されます。写真は3端子レギュレータです。形状や機能は様々であるので接続時はデータシートを確認します。
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オペアンプ、接頭文字はU。オペアンプには1回路入りと2回路入りがあり、それによりピン番号の対応が決まっています。ピンには、マークのある場所または文字が読める方向の左下を1として反時計回りに番号が振られています。
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2回路入りオペアンプの場合、図のように複数の回路記号を書いて接続を示すことがあります。3つの記号で1つのオペアンプに対応します。オペアンプはピン番号が省略されていることも多く、その場合は1回路または2回路のオペアンプを適時選択し、機能に対応するピン番号を確認、接続します。

Chu-Moyヘッドホンアンプを組み立てる

おそらく世界一有名な自作ヘッドホンアンプであるChu-Moyヘッドホンアンプを題材に回路の組み立て方を解説します。

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この回路図から部品の接続図まで理解できればokです。

まず見慣れない「GND」と書かれた記号があります。これは「グランド」と読み電圧の基準となる場所です。文字は省略されていることもあります。組み立てる場合はGNDのように同じ名前が付けらた記号は全部接続すると覚えておけば問題ありません。この回路ではGNDと書かれた部分はすべて互いにつながります。

VR1は2連ボリュームです。VR1と書かれた2つの回路記号は1つの2連ボリューム(部品)に対応します。このようなボリュームを使用するのは左右で同じように音量が変化しないと困るからです。

U1も3つの回路記号で、1つの(2回路入り)オペアンプに対応しています。原則的に1つの記号で1つの部品なのですが、このように1つの部品を複数の回路記号に分けて書く事もあるため注意が必要です。

またVRに書かれた10kAの文字は、全抵抗値が10kΩでAカーブのボリュームを使ってくださいという意味です。ボリューム(可変抵抗)には主にAカーブとBカーブの種類があり、音量調整では必ずAカーブを使用します。通常Aを付加しては書いたりしませんが、暗黙の了解として音量調節にはAカーブを使用します。

電源は9V電池1つです。006Pは9V電池の形状に対する名称です。006P=9V電池と覚えても差し支えありません。

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細い線は配線です。配線によって部品と部品を接続します。組み立て時はジャンパー線やリード線を使用して接続します。線と線が交わった場合は決まりがあり、「・」が打たれている場所は互いに接続しますが、そうでない場所は接続しません。

A地点は点が打たれているので上下の線と右からの線を接続します。B地点は点が打たれていないので左右の線と上下の線は接続しません。

ではC地点は? セオリー通りなら接続しないのですが、実際には接続しないと動作しません。なぜか? これは回路図制作者の単純ミスだからです。

点は打ち忘れることが非常に多く、回路図から打ち忘れでないか判断する必要があります。回路の動作がわからなくても、いくつかの回路図を見ているとだんだん慣れて打ち忘れは分かるようになります。また人によって全く点を打たない人もいるので注意が必要です。

これらを踏まえて実際の結線を模式図で示します。回路図とよく見比べてください。

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間違えやすいのはVRのつなぎ方です。2連ボリュームは前列と後列にそれぞれ3つのピンが並んでいます。列ごとにLとRに割り当てて使用します。右に回すと音が大きくなるので、正面から右側が入力、左側がGND、中央がボリューム調整後の出力になります。アナログの回転式ボリュームはほとんどこの結線ですので覚えておくと良いです。この部分の結線を間違えると音量調整ができなかったりします。

回路図の省略とその読み方

最初に示した回路図はとても丁寧に書かれており、実際の回路図では様々な部分が省略されています。例えばどのように省略されているのか、次の回路図を説明します。

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この回路図は最初のものと同回路です。何が省略されているのでしょうか?

片チャンネルの省略

アンプの回路というのは左右で同じものを作成します。ですので、左もしくは右チャンネルだけ回路図をしめせば十分なため片方を省略しています。

ボリュームの省略

ボリュームはあってもなくても構わないことと、ボリュームのつなぎ方は完全に決まっているために省略しています。

例えばiPodなどのように再生装置側に音量調節機能があればアンプ側のボリューム回路は無くても困りません。

入出力端子の省略

最初の回路図ではステレオジャック(ないしはステレオミニジャック)を入出力に使用していましたが、RCAを使うかもしれませんし、両方使うかも知れません。

ボリューム含め入出力のつなぎ方は決まっているのでわざわざ書く意味がほとんどないため省略しています。

オペアンプの端子番号省略

オペアンプに限りませんが、ICの足番号は省略することが多々あります。書くのが面倒などで省略されたりもします。

ICの中でもオペアンプは足番号が決まりきっていますから書かなくても問題がなく、1回路版や2回路版を回路を組み立てる人が自由に選ぶことも可能ですから、あえて省略することもあります。

オペアンプの電源の省略

オペアンプに電源をつなぐのは当たり前なので、電源のプラス側(+4.5V)とマイナス側(-4.5V)を取り出す場所だけ書いて、接続を省略しています。

2回路入りなら電源の低い方を4ピン、高い方を8ピンに、1回路なら低い方を4ピン、高い方を7ピンにつなぎます。

応用編

先程の回路に電源スイッチを追加してみましょう。

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電源が1つのものを単電源と言いますが、その場合プラス側かマイナス側のどちらかにスイッチを設けます。

模式図では右のようになります。SWの真ん中には必ずどちからの線を接続してください。SWの構造上、この図の接続ならば左に倒したときonになり右に倒したときoffになります。

両電源の場合

通常のChu-Moyでは9V電池をプラスとマイナスに分割して±4.5V電源として利用しますが、9V電池を2個用意すれば面倒くさい分割などはしなくて済みますし、音質的にも有利になります。

その場合、SWは右図のように接続します。

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電源からのびる線が3本になるので、そのうち2本にスイッチを設けます(なぜなら2本以上つながると電流が流れて電池がなくなってしまうからです)。

それぞれ個別のSWでも構いませんが、使いにくくなるので2連SW(2回路SW)を利用します。

今度は右に倒すとonになります。

まとめ

かなり簡単ではありますが、以上で回路図の読み方の初歩は終わりです。足りない知識は書籍などで補充してください。

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