レールスプリット vs 正負電源

はてブ数 2008/08/27電子::アンプ

前々から気になっていたのですが、電池駆動時レールスプリットと正負電源はどちらが良いのか検証してみました。

ことの発端

レールスプリットと正負電源どっちが良いのでしょうか? 随分前にコメント欄で議論になって以来すっかり忘れられてましたが、A47アンプ試作品を頂いたので、ちょっと改造して正負電源とレールスプリットをジャンパ1つで切り替えられるようにして検証してみました。

理屈の上では?

理屈の上では、だいたい次の通りです。

ただし電源は非安定化な電池(ただの電池直結)とします。

  • レールスプリットのメリット
    • 正負のアンバランスをレールスプリットICが吸収してくれる。オペアンプは、正負アンバランスなノイズに弱い。
  • レールスプリットのデメリット
    • レールスプリットICの出力ノイズが出力に出てしまうことがある。
    • レールスプリットICの駆動力が不足すると低音が出ない。

回路図

だいたい司さんのこの回路と同じです。20k→10kのように一部違いますが。レールスプリットソースは100kΩの抵抗分圧(コンデンサなし)。

検証結果

やはり低音で差が出ました。ドンって音の迫力が違いますね。レールスプリットだと少しぬるい。

  • エネループ2本(2.4V)と4本(4.8V)と006P×2本(18V)で試しましたが、どれも同じ結果でした。
  • 高能率ヘッドホンと低能率ヘッドホン(密閉)で試しましたが、…上に同じ。
  • 初段オペアンプをLMP7732とLME49721(ほか色々)で試しましたが、どちらも同じ結果でした。

レールスプリットオペアンプはLT1498(25mA-out)を使いましたが、これをLME49721(100mA-out)にすると高能率ヘッドホンでは遜色ないぐらいには鳴ります(低能率ヘッドホン(AKG)では正負電源に敵いませんでした)。

考察

レールスプリットICが理想的ならば非対称電源ノイズをレールスプリットICがすべて吸収するという理想的な構成ですが、なかなか理想的には働かないようで。

というのも、レールスプリットICの出力ノイズのうち平滑コンデンサで除去しきれなかった分はそのままヘッドホンに音(ノイズ)として流れます電源のゆらぎとなって現れます。もちろんそれを防止するためにレールスプリットの帰還外抵抗を大きくする(数十Ω。発振防止の意味もある)必要があるのですが、このせいで今度は駆動力が下がって低音が出なくなります。

まとめ

電池が偶数本ならレールスプリットするより、素直に正負電源化することをオススメします

まあLME49721(100mA-out/最大電圧5.5V!*1)のように駆動力の高いICを持ってくれば同等程度には鳴りますが、同等を通り越してメリットが分かるという状況はなかなか難しそうです。

出力抵抗と平滑Cがある時点で非対称電源ノイズ除去は期待できず、オフセット防止ならそれこそDCサーボ付けた方がよっぽどスマートな気がします。*2


ご意見はコメント/TBまで。

*1 : 新品マンガン電池4本やアルカリ電池4本では確実に壊れます。ご注意。

*2 : 電源が0.1Vずれたとして、はたして1mVオフセットが増えるかは疑問です(もちろんオペアンプによるのですが、普通はPSRR-60dB以上(オフセット計算値は0.1mV)ですし。