ボリュームの音質改善。L型とT型アッテネータ

はてブ数 2016/06/22 電子::アンプ

はじめに

onshitsu-r01.png

抵抗の場所と音質の謎で述べたとおり、抵抗には「音質への影響が大きい要素」と「音質への影響が比較的小さい要素」があります。

  • 直列要素は影響が大きい(図のR1)
  • 並列要素は影響が小さい(図のR2)

ボリュームは、可変抵抗という物理的制約上音質が良いものを利用しても固定抵抗に比べたら大きく劣ります。擬似Lアッテネーターはこの特性を利用して、ボリュームの音質を改善する方法です。

不思議な現象

volume-T_01.png

今回の実験回路です。VRは10KΩに固定して話を進めます。

R1とVRは擬似L型アッテネーターを構成しています。R1は2K~4.7KΩぐらいの抵抗を利用します(入力の大きさによる)。

R2は入力抵抗です。直列要素ですので抵抗があればあるだけ音質が劣化するはずでした。実際、今まで製作してきたアンプでは、R2は接続せず、常に0Ωにしています。

しかしこれだけでは理解できない現象に出くわしました。この回路では、R2を接続したほうが音が良かったのです

最初は2KΩぐらいで試したのですが、抵抗値をあげるとより音が良くなります。具体的には、R2として10KΩぐらいを接続すると一番音質が良くなりました。22KΩでは、オペアンプ入力端子のインピーダンスが上昇しすぎるのか、音質が低下し始めました。

つまり擬似Lアッテネータよりも、擬似Tアッテネーターのほうが音が良かったのです。

本当に音質を改善しているのか?

これまでの状況では、単に「オペアンプにとって入力インピーダンスがほどほどにあると音質が良くなる」という可能性を否定できませんので、きちんとしたT型アッテネーター回路を製作して検証しました。

volume-T_02.png

R1=2K(LGMFSA)、R3=1K(秋月カーボン抵抗)として、R2(LGMFS)を0Ωと10KΩで比較してみました。明らかにR2(LGMFS)を付けた方が音質が良くなります。

今度は逆にR3をLGMFSの1Kに変更した上で、R2を秋月カーボン抵抗の0Ωと10KΩで比較してみました。さすがに微妙なところですが、この場合もR2を付けた方が音質が良くなりました。

試しにR3をが切断してみると、R2の種類によらず存在しない(0Ωの)ほうが音質が良くなりました。よってこの現象は「R2とR3の何らかの相互作用によるもの」と考えられます。

また「R2の抵抗の種類によらず音質改善効果があり」、音質の良い抵抗のほうが効果が高い言えます。

オペアンプでない場合

昔、抵抗の音質をチェックしたときは、FETバッファアンプを使用しました。このとき、R2に相当する抵抗は入れない状態が一番良かったのですが、本当にそうなのか再度確認してみました。

volume-T_03.png

結論から言うと、R3にボリューム(2CP601)を付けた状態で、手持ち抵抗でもっとも音質が優れるRT0603をR2につけても音質が劣化しました。

つまり、この現象は「オペアンプの非反転入力に接続したときに改善効果があるが、FETバッファアンプのような構成では効果がない」ということが分かりました。

音質改善能力の差

さらに検証してみると、R2による音質改善はオペアンプによって大きく異ることが分かりました。改善が大きかった順に並べます。

オペアンプ電圧ノイズ電流ノイズ入力バイアス種類
LME497214nV(1K)4fA(10K)40fAbipolar
LMP77165.8nV(1K)10fA(1K)50fACMOS
LT16773.2nV(1K)300fA(1K)2nAbipolar
LMP77323.0nV(1K)1.1pA(1K)1.5nAbipolar
LT18073.5nV(10K)1.5pA(10K)1uAbipolar
LT62032.9nV(10K)0.75pA(10K)1.3uAbipolar
OPA23654.5nV(100K)4fA(10K)0.2pACMOS

データシートより抜粋。値はTypicalです。各オペアンプの測定条件は同一ではありませんので、相互比較としては誤差を含む値と思ってください。

観測した現象

他にも検証したことを含めまとめておきます。

  • 擬似Lよりも、R2を付けて擬似Tにしたほうが音質が良くなる。
  • ただしオペアンプ等の非反転入力であること*1
  • この現象はT型アッテネータのR3へR2が影響することで起こっている。*2
  • R2の抵抗値はR3の2~10倍程度がよい。ただし約20倍を超えると音質が悪化する。
  • オペアンプの種類により、改善能力に差がある。

*1 : 反転入力側も効果はあると思いますが、反転入力の時点で「入力信号と入力端子間」に抵抗が付いているので意味はない。

*2 : R3が存在しなければ、R2がついていない(ジャンパした)ほうが音質が良い。

仮説

volume-T_10.png

経路Aは入力信号の通り道です。入力信号は「R1とR3の分圧で減衰され、R1とR2を直列要素、R3を並列要素」としてオペアンプに入力されます。ですので、入力信号から見たらR2の抵抗が無いほうが良いことになります。

そしてオペアンプには入力換算電圧雑音というものが存在します。入力換算電圧雑音は、オペアンプの音質に深く関わってくるものですが、それは実際にオペアンプ入力端に発生するわけではありません。ただしアンプ回路を計測してきた実感として、オペアンプはオーディオ信号などを入力して動作させるときに、アンプの動作状況によって入力端子に雑音を発生させることがあります。*3

経路Bの電圧はR2とR3に印加されます。R3には「入力信号」と「オペアンプからの雑音」の2つの信号がかかることになります。雑音信号が入力信号に対して影響を与えることで、入力信号を歪ませます。

ところがR2があると、「オペアンプからの雑音」がそのままR3に印加されることはなくなり、雑音がR2/(R2+R3)されます。つまりR2が大きければ大きいほど雑音が減ります。

一方で、経路Bには「オペアンプの入力換算電流雑音」も生じます。この雑音は、信号源のインピーダンス(R2+R3)が大きくなればなるほど大きくなります。

  1. R2が大きいほど、R3で生じる信号歪みは小さくなり、音質が向上する。
  2. R2が大きいほど、入力換算雑音による歪みと、入力信号に対するR2そのものによる歪みが大きくなり、音質が劣化する。

この推察は、R2が大きすぎてもいけないなどの観測現象をよく説明できます。音質改善効果が大きいオペアンプは、入力換算電流雑音が小さいので(一部例外)、R2よる音質劣化が少なく改善効果が大きいと考えられます。

*3 : 例えばアンプの出力が大きく切り替わるときに、電流を急激に吸い取る(吐き出す)などしたり、電源由来のノイズが入力に漏れることもあります。

検証

仮説を検証するため、T型アッテネーターに細工をし次のようにしてみました。検証はR1=2K, R2=1K, R3=3K, U1=LME49721です。

volume-T_11.png

もし仮説が正しい(オペアンプ由来の雑音が音を歪める)のならば、U2を接続したとき音質が劣化し、またその劣化の仕方はオペアンプによって異なるはずです。

まずR9=0Ω(ジャンパ)として検証しました。U2に使用した時、狙い通り音質が劣化しました。劣化が小さかった順にオペアンプを並べます。

  • LT1807
  • OPA2365
  • LME49721
  • LMP7732
  • LT1677
  • LMP7716
  • LT6203

こうして見ると、電流ノイズなどのパラメーターと相関はないことが分かります。

続いてU2を最も影響が大きかった「LT6203」に固定し、R9に抵抗を入れて検証しました。

  • R9の抵抗値が大きければ大きいほど、影響を遮る
  • R9の抵抗の種類は全く影響がない

まとめ

  • オペアンプなどの入力にボリュームがつながっている場合、入力抵抗R2を付けた方が音質が良くなる。*4
  • R2の抵抗値は、T型アッテネーターのR3の2~10倍程度が良い。
  • R2による音質改善は、オペアンプ由来のノイズ(雑音)をR3に対し印加するのを軽減する効果による。
  • オペアンプの入力換算電流雑音が小さいほど、R2の抵抗値を大きくして大きな改善効果を得られる(例外あり)。

その他、信号源インピーダンス(究極的にはR3の値)によって、音質が最適になるオペアンプが異なるということも分かりました。

擬似L型(擬似T型)アッテネーターは音量調整がしにくいのですが、R1を付けずに通常のボリューム接続にR2として抵抗を接続するだけでも音質が劇的に改善することがあります。

実際に試してみたご報告や追試、考察へのご意見、感想、ツッコミなどありましたらコメントいただければ幸いです。

*4 : ボリュームが通常接続の場合も、T型のR1=R3=VRとみなせるので同様です。

2016/06/11(土)少年が逮捕されたB-CASソフトの件を調べてみた

逮捕容疑は昨年6月23日、同カードがなくても有料デジタル放送が無料で視聴できるプログラムを独自に開発し、自身のホームページ上に無料で公開して不特定多数の人が閲覧、入手できる状態にしたとしている。

(中略)

ネット上に公開された数百ページにわたるデジタル放送の仕組みが書かれた仕様書を読み込み、独自でプログラムを開発したという。プログラムをダウンロードすれば、ネットの掲示板などに投稿されている「ワークキー」と呼ばれる暗号をパソコンに入力することで放送を視聴できるようになるという。

<不正プログラム>TV無料視聴をネット公開、少年逮捕

「なんで公開されているソフトウェア仕様を実装しただけで逮捕されてるんだ?」というのが、これを読んだ時の正直な感想だったのですが、よくよく調べて記事にまとめてみました。

問題の背景

まず、現在日本国内でデジタル放送を受信する際は、すべからくB-CASカードというものが必要になります。これは、デジタル放送が暗号化されているためです。

まず、テレビの放送を受信した装置は、B-CASカードに対して「この放送(チャンネル)の暗号を解くための鍵を計算してください」と放送データの暗号に関する一部をカードに渡します。カードはそれ自体が小さいコンピューターのようなものになっており、カードは渡されたデータからその暗号を解くための「鍵」を計算して受信装置に渡します。

過去にあったBLACKCAS事件

BLACKCASと呼ばれる事件が起きます。2012年頃、BLACKCASなどと呼ばれる「すべてのテレビ局(有料放送を含む)が永久に視聴できるB-CASカード」がネット上で販売されるようになりました。

ほぼ同時期に、なんと間抜けなことに地デジ用を含めほぼすべてのB-CASカードには、あらゆる放送局の暗号を解除するための暗号鍵が記録されており、B-CASカードは「カード内に記録された各放送局ごとの有効期限の欄を参照して、その日時まで暗号を解けるようになる」という仕組みで動作していること、しかもそのB-CASカードのセキュリティーが甘々で中身を容易に書き換えられることが判明します。

例えば有料放送の場合は、受信契約をしないと有効期限が過去に設定されていて、視聴できないという仕組みです。

つまりカードの各放送局の有効期限を書き換えて、設定限界の2038年に有効期限を伸ばしてあげると、あらゆる放送局のデジタル放送を受信できるようになってしまいます。これがいわゆる2038年化です。

当時市販されていたBLACKCASは、大量に流通していたB-CASカードに対して有効期限を設定する書き換えを行ったものでした。

しかしもちろんすぐ問題になり、B-CASカード書き換えや解析していたサイトは警察かどこかに怒られたのかその手の情報を一斉削除。その後、書き換えたB-CASカードを販売していた人が何人も逮捕される事態となりました。

今回の事件

それから何年かして。

B-CASカードの動作を解析し、B-CASカードの動作をエミュレートするソフトが誕生しました。SoftCASといいます。ソースコード付きだったみたいでが、すぐ公開が停止されたようです。しかし、一度公開すればすぐに大量にコピーされて未だにネットの海をさまよっています。

検索した情報をまとめると、SoftCASは以下のとおりです。

  • B-CASカードをエミュレートするソフトで、このソフトを使うとB-CASカードが不要になる。
  • 有料放送を含めたあらゆる放送局のKW(ワークキー)を持っている

どう考えてもアウトです(笑)

さて、その後FreeCASというソフトが開発されました。これが今回の事件で捕まった人が作成したソフトのようです。このFreeCASとは一体何なのか?

  • B-CASカードをエミュレートするソフトで、このソフトを使うとB-CASカードが不要になる。
  • 無料放送のKW(ワークキー)を持っている。
  • 有料放送のKWを別途入力すると、有料放送を受信できるようになる。

つまり、SoftCASよりも性能が悪いわけです。なんでこんな意味のないことをしているのかと言う疑問には、作者の物と思われる次のテキストが答えてくれます。

FreeCASは無料の地上波しか見てない人向けというわけではないですが「有料放送部分のキーを含まなければ提訴の理由となる具体的な損害は発生し得ず、事実上訴訟リスクを回避できる」という発想のSoftCAS

法律に違反するか?

最初のYahooの記事だと「正規の受信プログラムを作っただけ」にしか読めなかったのですが、よくよく調べてみるとB-CASカードのエミュレーターだということが分かりました。

不正競争防止法違反ということですが、

デジタルコンテンツのコピー管理技術やアクセス管理技術を無効にすることを目的とする機器やプログラムを提供する行為を、営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で行った者

が刑事罰の対象になるようです。

有料放送を受信しようがしまいが、B-CASカードのエミュレーター(技術的保護の回避装置)という時点でアウトなのかと思ったのですが、きちんと法律を読むと営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的が刑事罰の必須条件です*1ので、有料放送のKWを含まないFreeCASは法律的に難しい判断になるような気もします。

別角度から無料放送をB-CASなしで見られることによる損害を立証するのもまた難しそうですし。法律家の判断を聞いてみたいですね。

法律、ちなみに

ちなみに、法律には「装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)」ともありますので、プログラムを分割したり、キット化して組み立てる装置とかにしてもアウトみたいですね。

*1 : 例えば、HDMIの暗号化をたまたま解いてしまうHDMIスプリッタが普通にAmazonで売られているのも、目的がHDMIの暗号化を解くことではないということだと思われます。

まとめ

  • B-CASカードは完全にクラックされてる(笑)
  • 地デジ(無料放送)の暗号化なんてやるからこんなことになる。*2

こういう正規の利用者ばっかり損するシステム止めませんかね。例えばHDDレコーダーで録画したデータを、モバイル機器やPCで再生するのすら一苦労なのに*3、不正規の利用者によって放送データを抜いてネット上で山ほど公開されている矛盾。

*2 : 大量にB-CASカードが世の中に出回る → 出回った数だけクラックされる機会が増える

*3 : 本当に本当に不便極まりない。

D級ヘッドホンアンプ Ver2 / pwm-hpa2

はてブ数 2016/05/28 電子::HPA

D級ヘッドホンアンプを、専用ICを使わずに、超高速(35MHz)に発振させ、電池2本という低電圧で動作させた、画期的かつ高音質のアンプです。

目次

D級ヘッドホンアンプの回路を公開して早4年。ようやくキットにしても良いかなという音質になったので、Ver2として公開します。

はじめに

過去、D級ヘッドホンアンプを実用化した例はほとんどなく、あったとしてもスピーカー用のD級アンプに抵抗を繋いでヘッドホンを鳴らしていた程度でした。

4年前、専用ICを使わないD級ヘッドホンアンプの回路公開して以来、たいへん多くの方に作って頂きましたが、D級の欠点である「高域の再現性」がやや劣る問題がありました。

それから2年後に、VerUpとして高速コンパレーターとロジックICを使った高速発振回路により、高域の問題を解決。それにより本格的なヘッドホンアンプへと進化しました。

本回路はそれを更に改良したものになります。

Ver2の特徴

  • 音を歪ませることなく35MHz発振させている
  • 出力バッファが6パラになり、低インピーダンス出力になった。

D級アンプは発振周波数が速ければ速いほど音も性能も格段に良くなるのですが、一般的なMOS-FET素子はそこまでの高速動作に追従できません。例えば、かの有名な「TA2020」の発振周波数は300KHz程度(本アンプの100分の1)しかありませんし、市販されているほとんどのD級アンプ素子は1MHz以下の発振周波数です。*1

このヘッドホンアンプは超高速ロジックIC(中身はMOS-FET)をパラレル使用することで、高速性と低出力インピーダンスを実現しています。ちょうど、バイポーラトランジスタのLAPT素子と同じ思想で、遅くて大きいMOSを使わずに、速くて小さいMOSを複数使用することで高速性と低インピーダンス化を同時に実現しています。

また発振周波数が速くできても、周波数が速くなればなるほど左右チャンネルが互いに干渉して音が歪むという現象も発生します。この問題を解決するため、左右のコンパレーター電源を分離するなど回路上の工夫をし、プリント基板のレイアウトも色々と工夫しています。

*1 : 最新のものでようやく1.5MHzとかそういうレベルです。

回路図

pwm-hpa2.png

  • 回路原理は元の記事を参照してください。
  • 電池は2本専用です。4本だと音が歪みます。
  • R1/R2は結合や誘導による信号の回りこみを軽減するフィルタを構成しています。とても重要です。
  • 全消費電流:約55mA(単3ニッケル水素で40時間程度)

音質

おそらく言われなければ誰もD級アンプだと気づかないと思います(苦笑)

手元の環境では、低電圧ヘッドホンアンプVer3(op-dbuf3)の回路と、双璧のような感じになっていまして、音質的に抜きつ抜かれつデットヒートを繰り返しています。

op-dbuf3と比べると、好みもあると思いますが、こちらのほうが音は良いかと思います*2。更に改造したい人は、配線が大変ですけどもチップ抵抗に載せ替えてみても良いかもしれません。

*2 : op-dbuf3も改良すると今より音が良くなる模様で、その際の比較は難しい。今までの基板でも簡単に再現可能なのでキットの説明書に改良方法を書いてあります。検証が終わったら記事にも反映させます。

キット化

pwm-hpa2.jpg

低電圧HPA(op-dbuf3)と同じTB-56ケースに入るようにレイアウトしてキット化しました。高速ロジックICの、NC7WZ16がとても小さいのでハンダ付け難易度は高めです。

また入出力端子には4極ジャック(GND分離対応)を使用しました。3極でもそのまま使用できますし、4極仕様のヘッドホンをお持ちの方は、一味違った音質を楽しめます。*3

*3 : 4極のピンアサインはプラグ先端からL/R/LG/RGです

購入はこちらから

関連の頒布物もリンクしておきます。

販売元(メーカー)がBispaになっている商品については、品切れの際はBispa様にお問い合わせください。ついでに、op-dbuf3もGND分離対応になりました。

その他

  • 手元の環境では十分にテストしていますが、きちんとハンダ付けされ、かつ、ちゃんと電池が残っている状態で音が歪むなどの問題がありましたら、具体的にコメントにてお知らせいただければ幸いです。*4
  • オシロで観測すると出力にスイッチノイズが若干残っているのは仕様です。再生音には影響はありません。むしろ、スイッチノイズを完全に消そうとすると音質が悪化します。
  • ユニバーサル基板で再現するのはかなり大変だとは思いますが、絶対に不可能というわけでもないとも思いますので(この辺使えば)、興味ある方の挑戦をお待ちしています。

*4 : その場合、基本的にはR3/R4/C3/C4のいずれかの値を大きくする(3Kや330pF)他解決法はありません。ご了承ください。

作例ほか

感想・作例、心待ちにしています。

導体性高分子コンデンサ聴き比べ

OS-CONに狙いを定めてから、もっぱらOS-CONのSEPCばかり使ってきましたけど

「はたしてSEPCってそんなに音いいの?」

という疑問が湧いてきたので検証してみました。

検証

一昔前は固体コンデンサと言えばOS-CONしかなかったのですが、現在では導体性高分子コンデンサを各社が開発・製造しています。ですので、他社製品も検証してみようというのが今回の記事です。

pcap.jpg

  • Panasonic SEPC 2.5V 2700uF / 10mΩ / σ:0.1
  • ニチコン PLG 2.5V 2700uF / 8mΩ / σ:0.08
  • ニチコン PLG 2.5V 3900uF / 8mΩ / σ:0.08
  • 日本ケミコン PSC 2.5V 2700uF / 8mΩ / σ:0.1

いずれもほとんど同サイズ(φ10mm×12-13mm)でほぼ同性能の導体性高分子コンデンサの大容量低ESR品(8-10mΩ)になります。新しいD級ヘッドホンアンプ(近日公開予定)の電源用コンデンサとして使用しました。

SEPC

これまで数多くのアンプで使用してきました。元々SANYO製で、SANYOがなくなったあとはパナソニックが製造を引き継いでいます。

OS-CONは元々有機半導体コンデンサについた名称で、現在の固体コンデンサ(導体性高分子コンデンサ)のパイオニアとなった技術です。

SPECは高分子コンデンサの中では、大容量・低ESR品になります。

os-con.png

https://industrial.panasonic.com/jp/products/capacitors/polymer-capacitors/os-con

PLG

刻印が「LG」なのでニチコンLGと呼ばれることが多いようですが、以前はLGというシリーズ名だったようですが、現在の正式名はPLGです。刻印はLGになります。高分子コンデンサの中では、SEPCと同様に大容量品に位置します。

nichicon.png

http://www.nichicon.co.jp/products/solid/solid_daia_f.htm

PSC

刻印「C」で型番がAPSCで始まるためAPSCとも呼ばれることがありますが、正式名はPSCです。高分子コンデンサの中では標準品に位置しますが、他社との比較では「大容量品」に相当します。

ni-cemi.png

http://www.chemi-con.co.jp/catalog/aluminum.html(pdf)

聴き比べ

ソケットを使わず、めずらしくすべてハンダ付けによる検証をしました。*1

PSC >> PLG 3700uF > PLG 2700uF >> SEPC

という具合でした。SEPC音良く無いじゃん!(笑)

PSCやPLGはエージングが進まないと結構酷い音がするのですが、SEPCはその点少し安定している印象でした。

*1 : エージング含め、とても時間かかりました……

追加検証

大容量品ではなく、小型品(φ6.3~8)でも検証してみました。検証回路は異なるものを使用しています。

  • SEPC 6.3V 560uF
  • SEPC 16V 470uF
  • PSF 16V 470uF
  • PSC 6.3V 560uF
  • PSC 16V 470uF
  • L8 6.3V 1000uF
  • S8 6.3V 680uF

PSFはPSCの低ESR品です。6.3V品が流通していないため、16V品で代用しました。

L8、R8はFPCAPシーリズの1つです。FPCAPは元々富士通が開発・製造していたコンデンサのシリーズですが、現在はニチコンが買い取りニチコンより販売されています。

聴き比べ

PSF 16V > PSC 16V > PSC 6.3V > S8 > L8 > SEPC 16V ≥ SEPC 6.3V

やはりPSCの音質が優れる結果に。そして比べた時のSEPCの音の悪さ(苦笑)

ついでに、HZやMCZなどの高分子ではない従来の低Zコンデンサと比較してみましたが、SEPCより明らかに劣りました。

まとめ

  • 導体性高分子コンデンサも、種類によって音が違う
  • SPECは音質よくない
    • ただSEPCの「中広域のキレ」みたいな音は、これはこれで好きだったりします。
  • 低ESRはだいたい正義

これからはPSCとPSFをベースに使っていこうかなと個人的には思っています。

補足

SEPCの性能が悪いわけではないのでそれだけは誤解しないでください。これは性能テストではなくて音質テストです。性能テストならば、もっと全く別の評価をする必要があります。

また空間再現能力を最重要視してテストしていますが、音質に関する要素は人それぞれ好みがあり、ましてコンデンサはオーデオ的な音色の差が出やすい素子ですので、その点はご理解願います。

それとSEPC以外は、エージングに結構時間がかかります。買ってきたばかりのコンデンサでは(しばらく電圧を与えないと)本来の音質は出ません。比較する際はご注意ください。

2016/04/18(月)普段P板の人がFusionPCBに基板を注文してみた

P板の品質にはまあまあ満足しているのですが*1、最低3万するので*2試作基板作るにはちょっと値段が高いのですよね……。

そんなわけでP板使いの人がFusion PCBを使ってみたメモを。

*1 : 昔は必ずフォトシルクという高品質なシルク印刷をしてくれたのですが、最近シルクの方法を「お任せ」にすると工場によるのか汚いシルクのことがあるので、それがとても不満

*2 : 最安だと2.5万円ぐらいだけども。いつもだいたい3.5-4.0万円。

Fusion PCBとは

いくつかある格安基板製造会社のうち、比較的品質の評判がよく、それでいて値段の安いところです。

最安なら$9.9で基板を作ってくれます。1000円ぐらい。

Fusion PCBのデザインルール

よく使うP板との違いをまとめてみます。

項目P板Fusion PCB
最小パターン幅0.127mm0.1524mm
最小パターン間隔0.127mm0.1524mm
最小シルク高さ1.0mm1.0mm
最小シルク線幅0.127mm0.1524mm*3
最小ホール経0.3mm0.3mm
最小ランド経(PTH)0.6mmHole+0.3048mm以上
銅箔厚18um/35um*435um/70um

P板はルールに違反すると弾かれますが、Fusion PCBは細かいルール違反でも基本的にはそのまま製造してくれます。

面付けルール

面付けの方法は「What are the PCB panelization rules?」にありますが、要するに基板同士をくっつけて配置すればokです。

  • 同一基板の面付けは、面付け代不要
  • 異種基板の面付けは、種類数に関わらず5面付けまでで有料

P板のように切り離してくれるのかな? と思ったら、単にVcutで処理した基板が送られてきました。

  • 最小基板サイズ : 7cm×7cm
  • Vcut後最小サイズ : 2cm×2cm

P板は台湾工場を選べば制限なくやってくれますし、Vcutと面付けは別々として扱われるので(Vcutではない切り離された面付けができるので)、ちょっと融通は効かないですね。

と思ったのですが、追加料金で$16払ったらもっと小さくも切ってもらえました。

ただのV-cut

アウトラインはつなげた状態で、シルクスクリーンに直線を引いてVcutすればいいらしい。この方法のV-cutで面付けしようとすると、面付け料金払えと怒られます(苦笑)

*3 : 推奨0.2mmで、シルク線幅 = 高さ*0.2が推奨値。

*4 : 70umは特注対応。その際、最小パターン幅が0.15mmになる。

ガーバーデータの形式

P板、Fusionどちらもzipなどで圧縮してファイルを送信します。

P板はREADME.TXTなどのファイルを用意し、その中に拡張子とレイヤーの対応付けを記述します。

(1)部品面パターン		*.cmp
(2)半田面パターン		*.sol
(3)部品面レジスト		*.stc
(4)半田面レジスト		*.sts
(5)部品面シルク			*.plc
(6)外形線データ			*.dim
(7)ドリルデータ			*.drd

Fusionは予め定められた拡張子に、ファイル名を変更します。

  • 部品面パターン : .GTL
  • 部品面レジスト : .GTS
  • 部品面シルク : .GTO
  • 半田面パターン : .GBL
  • 半田面レジスト : .GBS
  • 半田面シルク : .GBO
  • 外形線データ : .GML
  • ドリルデータ : .TXT

注文から届くまで (EMS)

面付けしたり色々カスタマイズしたりしても$100ぐらいですのでお安いです。

送料ですが、Air Mailが最安で$6ぐらいでしたが、ものすごく(1ヶ月以上とか)遅くなることがあるらしいので、EMSを選択しました。昔中国から買い物したときは、EMSで1週間もしないで届いたので、比較的早く届くかと思っていたのですが……。

  • 3/31 オーダー
  • 3/31 基板製造開始(PCB Processing)
  • 4/05 基板製造完了(In production)
  • 4/06 発送準備中(Processing)
  • 4/08 追跡可能(Traceable) …… しかしこの時点では追跡不可能
  • 4/11 17trackでのみ追跡可能に。発送準備中。
  • 4/14 EMS荷物としてシンガポールより発送
  • 4/16 国際交換局に到着
  • 4/17 国際交換局から発送
  • 4/18 荷物到着

製造完了から実際に発送されるまで実に9日。製造完了から到着まで13日。EMSの意味が無い。Air Mailも同じルートを通るそうなので、それでも大して変わらなかったんじゃないかと思ってます。

中国の荷物がなぜシンガポールから発送されるかと言うとその方が安いからだそうです

注文から届くまで (UPS) 2016/05/25

UPSは早いらしいと聞いたのでUPSで頼んでみました。

  • 5/09 オーダー
  • 5/11 基板製造開始(PCB Processing)
  • 5/13 基板製造完了(In production)
  • 5/17 発送準備中(Processing) - 深センから出荷
  • 5/18 追跡可能(Traceable)
  • 5/19 香港着
  • 5/21 UPSに荷物引き渡し。香港から発送
  • 5/22 シンガポール到着
  • 5/23 シンガポールから発送
  • 5/24 深セン着(飛行機の経由地?)
  • 5/24 日本着
  • 5/25 荷物到着

製造完了から発送まで8日。製造完了から到着まで12日。EMSより1日早いだけ。

またなぜかシンガポールを経由して、しかもシンガポールから工場のある深センを経由して荷物が届くという*5クソ仕様でした。

*5 : 飛行機の経由地だからしょうがないのでしょうが微妙な気持ちになる

基板の品質

FusionPCB-test.jpg

シルクは思ったより綺麗でした。一番小さい文字は「1.0mm/幅0.15mm」ですが、やや潰れています。読めなくはないですけど。少し大きめの「1.5mm/幅0.2mm」は十分な品質。

あとレジストとシルク間にマージンがあるせいで、シルクがP板に出すものよりも狭く(細く)なっていました。

シルク以外に特に気になるところはなし。

まとめ

  • お値段も安く基板の品質は十分。
  • 高さ1mmのシルクは潰れやすい。
  • 発送方法に関わらず早く届ける気はないらしい(EMSやUPSを選択するのは愚行)

次はElecrowに頼んでみようと思います。とはいえP板以外の選択肢ができたのは良いですね。

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