2008/05/12(月)電流駆動アンプの製作

さらに改良し別記事にまとめました(2009/01/21)。


F通のPCスピーカーを改造して作った電流駆動アンプの調子が悪くなったので*1、部品を外して再構成してみました。

*1 : 回路の接続を間違えて発振させたまま数日放置してからパワーアンプICの調子が悪くなった

回路図

current_amp2.gif

以前の電圧帰還と電流帰還のミックス型から代わり、完全な電流駆動(電流出力)アンプとして構成しました。当然のことながらフルレンジスピーカー専用です。

通常のスピーカーを電流駆動にすると、高域がやたら強調されてしまうため、スピーカーインピーダンスが上昇し始める1kΩ付近から効くアクティブ型1次LPFを構成しました。

出力段はオペアンプ+ダイアモンドバッファというシンプルな構成です。ダイアモンドバッファ部の設定は別にまとめてありますので、ダイアモンドバッファ関連の記事を参照してください。

Chu-Moyもどきの電源構成(抵抗分圧による擬似正負電源)です。レールスプリッタを使えば良かったと今更ながら思いますが、もはや分解するのが面倒なのでこのままにします。

R14が帰還抵抗になります。LPFのゲインは1に調整してあるため、回路増幅率は「スピーカのインピーダンス/R14」で決まります。

回路の製作

回路写真コイル分解前
current_amp2.jpg
current_amp2l.jpg
kiban.jpg
  • 電源入力のフィルタコイルはエナメル線を割り箸に巻き付けました。適当ですが1~3uHぐらいだと思います。ESRは0.3Ωありました。
  • 最初、ACアダプタの電源が安定化されていないことをすっかり忘れていて、あとからLM7812を追加するという痛い目をみました。
  • 本当は正負電源にしたかったのですが、ACアダプタが分解できないタイプのため諦めました。
  • コンデンサは差し込み端子になっており、スピーカーに対して微調整できるようになっています。

なるべく簡単に作ろうというコンセプトだったのですが、熱暴走が起こったり、発振したりとしたため、あまり簡単にはなりませんでした。

LPFの定数(カットオフ)はスピーカーインピーダンスによって調整する必要があります。カットオフ点(-6dB地点)fcは

fc[Hz]=\frac{1}{2\pi CR}

です。今回は、10k、0.01uからおよそ1.6kHzです。理論上は、スピーカーユニットのインピーダンス曲線を見て上昇に転じているところ(インピーダンスが一番低いところの2倍になっているところ)を設定すれば良いことになりますが、最終的には試行錯誤しかありません。

差し込み端子にしてR6とC8を変更すると良いでしょう。ただしR6とR7の関係でLPFのゲイン(=R6/R7)が決まるのであまり自由には変更できません。C8, R6, R7をすべて差し込み端子にするのがよいのかもしれません。

コンデンサは前のものを使い回し(コンデンサはMuse-FGが大半)、抵抗はごく普通のカーボン抵抗。

音質

以前と比べて大分すっきりした音になりましたが、完全電流駆動なので低域共振が(以前と比べ)はっきりわかります。明らかにフラットではありません。200Hzぐらいで盛り上がっている印象です。ちょっと気持ち悪いかも。

確認のためF特を測定してみました。PC用マイクなので測定系がデタラメですが(特に高域)、低域の盛り上がり傾向は出ています。

current_amp2_freqres.jpg

それ以外の高域や定位などの再現性は大変優秀。またカップリングコンが無くなったので音ははっきりしています。少なくともオリジナルの状態よりは相当良いのですが、かけた労力に見合っているかは不明だったり。

まとめ

電圧帰還型と比べて帰還は比較的安定でした。きちんとした計算はしていませんが、スピーカーの公称インピーダンスである直列4~8Ωと、高域ほど帰還量が少ない(増幅率が1より高い)ことが安定性に寄与しているようです。

電流駆動アンプに対する問題点は2つです。

高域の音圧上昇の問題

今回のLPFを使用した回路で、中高域は比較的(聴覚上問題ない程度に)フラットにすることが可能です。この原理は、R+コイルによるインピーダンス上昇は、1次LPFの逆になることに起因しています(参考:理論的考察)。実際にはユニットごとに調整する必要はありますが、およそ500~1kHzぐらいからインピーダンスが上昇するようです。

このように音圧上昇はLPF型の補正をかけることで解決しますが、これは同時に音の立ち上がりを悪化させることになります。デジタル段で補正しようが、アナログ段で補正しようが同じことで、何のための電流駆動なのかという意味を半分失います。もっとも悪化させると言っても「電圧駆動と同程度になってしまう」だけであり、それ以前に超高域の立ち上がり特性が音質に与える影響は疑問視しています。

低域共振の問題

現実的な解法としては、ディバイダー(周波数で信号を分割する回路やフィルタ)を使って中高域を電流駆動し、ウーハーとスコーカー(+ツィータ)を別々に駆動するのが良いと思います。

50~100ミリ秒程度の(ユニットによる)共振周波数(低音)によるスピーカーの制動の悪化が無視できるならば、周波数特性をフラットにすることは比較的簡単です。ゆるやかなノッチフィルタ(谷状のフィルタ)で、共振周波数の逆特性になるよう補正すれば済みます。

電流駆動アンプ再考

山本式電流帰還アンプ(電流出力アンプ)として一時期随所で取り上げられた「電流駆動アンプ」でしたが、LPFで補正してあげると平凡なユニットはやはり平凡な音がします。結局のところ、山本式電流帰還アンプと呼ばれる一連のアンプは単ハイ上がりだっただけと言わざる得ないでしょう。その効果を(自分を含め)多くの人が勘違いしたことにすべて起因しています。

しかしながら、その勘違いにより電流駆動の考え方がすべて悪かったと言えるわけではありません。スピーカ駆動における非線形性問題を解決するという利点はなおも残っています。補正による音質劣化も否めませんし、ユニットが電圧制御用という問題もあり、最終的には結論は出ないとは思いますが、フルレンジ等のユニットを1つ固定すれば比較することは可能だと考えます。

参考リンク

*2 : 以前にも書いていますが、このサイトの理論解析は(新たに書き足された部分を含め)正しくありません。理想電流駆動アンプのDFは無限大が正解です。

ちなみに

このF通スピーカーの改造。凝って作った割には使用目的はメッセンジャーの着信音だけ(ぉ*3

*3 : 回路云々の前に、スピーカーユニットがくそったれなので。高域がまるで出ないし。

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