単3×2、LM4880/LM4881 ポータブルヘッドホンアンプ

はてブ数 2008/06/17電子::HPA

LM4880(LM4881)を使用した、たった8部品のポータブルヘッドホンアンプです。以前紹介したLM4880アンプのDC直結改造版になります。小型アンプを求める人が多いようなので公開します。

部品点数が少なく、製作が非常に簡単です。

概要

単3電池×2ヘッドホンアンプ製作に凝り始めるきっかけとも言える「LM4880アンプ」でしたが、自作FETヘッドホンアンプに比べて明らかに音質面で劣っていました。この回路をDC直結アンプとして改造したところ、見違える音質となったので紹介します。

Chu-Moyよりもよっぽど電池が持ちますし*1、ここで紹介している他のどのアンプより製作が簡単です。音質は他のアンプと同等クラスで、ポータブルとしては充分すぎます。

*1 : 音量や電池容量によりますが、100時間ぐらい持つのではないかと思います。

回路図

LM4880-DC-LR.gif

最大電圧5.5V(±2.75)まで!

Ra, Rbは入力/帰還抵抗です。-1倍動作になっています。必ず20kΩである必要はなく、15kΩ~30kΩぐらいで適当に選び4箇所とも同じ抵抗値にしてください。入力ボリュームは必ず10kΩ以下を使用してください。(大きくても20kΩ以下)。ボリュームの全抵抗値を大きくすると音量調節が狂います。入力/帰還抵抗より小さな値を選ぶと考えましょう。*2

電源電圧は2.1V付近まで動作するようです。普段はニッケル水素やニッカド電池で使用していました。

*2 : かと言って帰還抵抗を100kΩなどにすると音質面から不利になります。

部品選定

回路がきわめて単純なため、「電源コンデンサ」「入力ボリューム」「帰還抵抗」の音がそのままストレートに出てきます

おすすめの部品は以下です。(2016/09現在)

回路図の項に書いたとおり、抵抗の抵抗値は15~30kΩぐらいならば適当で構いませんので、入手性と折り合わせて自由に選択してください。

音響パーツと入手方についてはヘッドホンアンプの部品入手に関する説明を参照してください。

製作時の注意

電源の配線に注意してください。一番下の配線参考図もみていただいて、「8番→C1→C2→4番」のルートをできるだけ短く太くしてください。不安なときは更に、4番と8番の足の直近で0.1uFのフィルムコンデンサを取り付けてください。

ICの入手

  • (2014/11/07) LM4880/LM4881共に秋月で売ってるそうです。
  • bispaにてLM4880が入手できます。その他推奨部品もここで買えます。DIP変換基板、OS-CON、抵抗はLGMFS、ボリューム(RD925GかR1610G)。ついでにチップフィルムコン 0.1uFを買うのをおすすめ。
  • 頂いた情報によると、共立電子(デジット)の店舗でもLM4881を販売しているそうです(通販には見当たりましせんでした)

音質

結局のところ、抵抗(とコンデンサ)の音がそのまま出てきてるように感じます。ニッコームRP-44C/18kΩで確認する限り、他の自作アンプの方が少し良いかなという印象ですが、十分及第点だと思います。

高能率イヤホンでの注意

コメントがあったため確認したのですが、インピーダンス16Ωのイヤホンなど、超高能率イヤホンではIC自体が発生するノイズがわずかに聞き取れます*3。街中などではほぼ分からないと思いますが、静かな部屋ではシーというホワイトノイズが聞き取れます。

あまり気にならないレベルだとは思いますが、ご了解ください。IC自体のノイズはどうやっても消すことはできないので、代替案としてこのアンプの簡易型なども検討してみてください。

*3 : MDR-E931SP(=125dBu)にて確認しました。一般的な高能率ヘッドホンである 102dB/mW,40Ω=115dBu ではまったく聞き取れません。

解説と原理

LM4880/LM4881は元々ポータブル向けに低電圧用途で開発されたICです。単電源駆動用に作られていますが、仕様外ながら内部回路をうまく利用することでDC直結で使用てきます。

LM4880-DC.png

DC直結の方が音質がよい、部品点数が少ないといいことずくめです。オペアンプを無理して低電圧で駆動させるよりも、この方法がスマートでしょう。

またこのアンプは元々ポータブル用途として保護回路等(例えば出力抵抗)なしで単独で安定動作するよう設計されており、そのおかげで非常に簡素な回路ながら十分な音質が得られます。

配線参考図

配線図に近い回路図(LED/スイッチ付)。

LM4880-DC-LR-haisen.gif

ICの枠内も実際に配線してください。ステレオジャックが部品記号になかったのでしょぼいことになってます。

リンク等

コメント欄にありますが、KANさん発案のJFET(2SK170/2SJ74)のコンプリメンタリバッファ(ディアルソースフォロア)を入力部(入力抵抗とRaの中間)に付けると、音質が著しく改善します。ボリューム位置により少し発振しやすくなるので注意ですが(^^;;

KANさんがその内容を製作記事(前段バッファ)に書かれたようです。回路図は3rd Projectさんの記事を見てね。

2008/06/11(水)DACの出力に残るノイズ

高音質な バスパワーUSB-DAC の製作 (PCM2702)を作ってます。またもLPFを設計してて気になったのですが、8xオーバーサンプリングぐらいだと、高域ノイズを完全に消すのって難しいんですよね。

そんなわけで、他のDACだとどれくらい高域ノイズが残っているのか、20kHzのsin波(0dB)をWaveGeneで再生して確認してみました。

PCM2901(LPF前)PCM2702(LPF前)SE-U55SX(VLSC前)
PCM2901_pre.jpg
PCM2702_pre.jpg
se-u55sx_pre.jpg
PCM2901(LPF後)PCM2702(LPF後)SE-U55SX(VLSC後)
PCM2901_lpf.jpg
PCM2702_lpf.jpg
se-u55sx_vlsc.jpg

太い筋のようみえるのがオーバーサンプリングによる高域ノイズです。

  • オシロで確認出来るぐらいなので、どの場合も結構残ってます。
  • PCM2901もPCM1796(SE-U55SX)もどちらも8xオーバーサンプリングですが、内部のフィルタの違いが出力波形に出ています(後者はオーバーサンプリングの固定地点が見て取れます)。
  • PCM2901はかなり強めの2次LPFをかけていますが、まだノイズが残っているようです。
  • VLSCはさすがに高域ノイズを減らしますが、オシロの波形をみる限り完全になくなってはいないようです。
    • VLSCはあくまでサンプリング点のパルスノイズを低減することが目的(ONKYO曰く)なので、高域ノイズが減ったのは副産物(?)とも言えるかも。
    • そもそもSE-U55SXの回路図をみると、VLSCや96kHz再生を前提としているためか、LPF自体がかなりゆるめ(カットオフ100kHz前後)の設計です。

SE-U55SXのマイク端子からなぜかVLSC前の出力が出るようになっているのですが(笑)、聞き比べてみるとたしかに聴覚上ざらざら感がなくなったように感じます。音の見通しがよくなるというのかな。余計な回路が付いている分だけ音が悪くなると思ってたんですが、そうとも限らないみたいです。もっとも、LPFをもう少し強めにかけてあげれば違って聞こえそうですけどね。

こうしてみると、PCM2901もLPFもう少し強くかけていいように感じます(再生音がややざらざらしてるので。

感想

こうやって眺めてみると、いくら聞こえない(?)とはいえ、私たちは随分とノイズまみれの音を聞いてるんですね。カットオフを高めに設定した、4次とか6次とか8次とかのアナログLPFかけたらどんな感じに聞こえるのか、少し気にはなります。

作るのが面倒くさい上、まともな抵抗とオペアンプ使って作らないと意味がないので(それによる音質劣化が激しいので)、しきいが高いですね。100万とかするDACって、8次LPFとか、オペアンプパラレル接続とかしてるんでしょうかやっぱり。

ボルテージフォロワは入力ラインのL成分で発振するか?

はてブ数 2008/06/06電子::アンプ

エミッタフォロアには、入力抵抗を付けないと発振する現象が知られています。これは入力ラインのL成分により単体でコルピッツ型発振回路を形成するためです。FETのソースフォロアでも同じことが起こります。

では、オペアンプの場合のボルテージフォロアでも同じことが起こるのでしょうか?

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2008/06/04(水)最近読んでる面白いブログと近況

電子工作、エレクトロニクスの寄り道

抵抗の雑音特性を計ろうとしている方のブログです。

抵抗には低周波(1/√HZに比例する)で発生するフリッカ雑音というものがあり、抵抗体の材質によって異なります。抵抗による音の差はこの辺と関係しているのではないかと思ってますが、それを探求されています。

雑音考察の記事が非常に面白いです。古い記事に、詳しいお話が載っていてとても勉強になります。

Beginer Of Eternity (司の奮戦記)

オペアンプを調べていたら見つけました。ひたらすオペアンプの音質評価をされています。技術者のようで、信憑性がありそうです。評価回路図が載っていないのがちょっと残念ですけど、自分よりも耳がいいらしく色々と参考になります。

評価回路図を掲載してくださいました。感謝。

近況(最近考えてること)

ずっと気になっているのは、抵抗やオペアンプによる音質の違いの正体。

どうやらフリッカ雑音ではないかと思い始めています。ただし、フリッカ雑音が直接的に影響している(直接フリッカ雑音により音質が劣化している)とは考えてません。人間の耳は超鈍感ですので、そのレベルの雑音があっても分かりません。

フリッカ雑音は(一定電圧をかける等)定常状態に対して定義されています。しかしながら、この雑音の要因となるものは「信号の変動(電流変動)」に対してそれに比例した何らかのノイズを出すのではないかと思います。入力対してノイズを出すため信号を元歪めてしまう。

以上は仮説です。フリッカ雑音を直接測定するのも面白いとは思いますが、過渡応答特性を直接測定すれば差が出そうだなと考えています。そのためには測定系(再生装置と録音装置)が極力歪まないことが大前提になるので、測定出来ない今は耳で確認するしかないという。

聞き比べとか

DAC(U55SX, Prodigy192VE)もあれから色々いじってて、再生能力が上がり続けています。そのうち「これ以上差なんてわからん」というポイントに達するかと思ったのですが、まだのようです。

辛いのはオペアンプの聞き比べ。あの回路で比べる限り音質良すぎてよく分かりません(笑)。誰か耳のいい人、代わりに聞き比べてみませんか? むしろあのランク付けに否定的な見解が(あまり)出ないのが不思議です。オペアンプ音質比較キットとか出したら、みんな聞き比べてくれないかな(苦笑)*1

抵抗はNS-2Bで(値段はともかく)決着。直結状態という正解があるから、非常に評価しやすい。その点オペアンプは基準がないので評価が難しい、難しい。でも、LM6172で満足しててはダメそうなので、もうすこし探してみます。

*1 : 中点バランス抵抗嫌いだから006P×2かな